ブリジット:
「おはようございます」
エリック:
「よう」
「オアシス・スプリングスで事件だ」
ブリジット:
「またですか!」
エリック:
「行きたそうな顔だな」
ブリジット:
「是非とも」
エリック:
「替わってくれ」
ブリジット:
「ふふ。今度私も連れて行ってください」
エリック:
「そりゃ良いアイデアだ。その時は俺の分まで働いてくれよ。
じゃあな」
ブリジット:
「(オアシス・スプリングス、最近治安が悪くなってる……)」
「オアシス・スプリングス。
その名の通り、西の砂漠の中にあるオアシスのような街だ。
街の中心には大きな公園、デザートブルームがある。
所有者はアーサーの実家、ベラミー家だ」
「デザートブルームからほどなく歩いた場所リオ・ヴェルデに、ベラミー家の本家が建つ。
国王に長く仕え繁栄してきた歴史を持つ彼らは、この国を象徴する存在と言える」
「(治安が悪くなったのはオアシス・スプリングスだけじゃないけど……)」
「(私も早くエリックさんみたいにあちこち駆け回りたいなあ)」
アリシア:
「わー!や、やばっ!!」
ジェイコブ:
「あ~……朝からうるせえガキだな、マジで……」
アリシア:
「あっ!
ちょうど良いとこに修理屋発見!」
ジェイコブ:
「何だ?」
アリシア:
「いや~~、朝からすいませんね旦那!
ちょいと厠のやつが水漏れ起こしちまいましてねえ!!」
ジェイコブ:
「……ああ!?ちょっ、どけ!
あっ……てめえ!!!!」
<ビチャッ>
「……うえっ!!
馬鹿野郎、水浸しじゃねえか!!!!」
アリシア:
「だって流れないんだも~ん!
何回も流してたらこうなっちゃった」
ジェイコブ:
「どうしてお前ってやつは………………。
ああ、もう向こう行ってろ。気が散る」
アリシア:
「へーい」
ジェイコブ:
「くそ……あのガキ……」
「では、次のニュースです。
昨日、ウィロー・クリークの路上で
未確認飛行物体UFOにより男性一人が拉致された事件で、
誘拐の瞬間をカメラが捉えていました。
まずは、こちらの映像をご覧ください」
アリシア:
「ん?UFO?」
「映像は旅番組収録時のものでしたが、画面右側にご注目ください!」
アリシア:
「んん?」
「UFOです!まさにUFOです!」
アリシア:
「う、うおおお!!
もろUFOじゃーん!!」
「……事件現場と中継がつながっています。
バクスターさん?」
「はい」
ジェイコブ:
「あのガキがしでかしたことを処理すんのはいつも俺じゃねえか……」
「バクスターさん、最近のエイリアンによる誘拐事件との関連性はあるのでしょうか?」
「残念ながら映像ではエイリアンの姿は確認できず、警察当局は慎重な捜査が必要だとしています。
しかしながら既にウィロー・クリークでは誘拐事件が数件報告されており……ハッ!!!」
「……バクスターさん?聞こえますか?」
「じょ、上空にUFOが!!うわああああ!!」
「バクスターさん!
……バクスターさん!!???」
「以上、中継でした。
次のニュースです……」
アリシア:
「マジ~、誘拐だってえ」
ジェイコブ:
「このスットコドッコイ!」
アリシア:
「ぎくっ!」
ジェイコブ:
「てめえ、人にやらせといて……」
アリシア:
「だって向こう行ってろって言ったじゃん!
それに、見てた今!?
バクスターさんがUFOに連れて行かれちゃったよ!?」
ジェイコブ:
「うるせえ!
朝からこんなくだらねえ番組見てんじゃねえ!」
サマンサ:
「おはよう。何の騒ぎ?」
ケイト:
「今日も賑やかね」
アリシア:
「おはよ~!
実はさっきトイレが水漏れ起こしてさ。
でも修理屋が直してくれたからもう使えるよ」
サマンサ:
「水漏れ?……」
ケイト:
「あなた、何かしたんじゃないの?」
アリシア:
「み、皆すぐあたしを疑うんだから……。
あたしは何もしてないよう!」
ジェイコブ:
「流れないのを無理に流したんだろうが!」
ケイト:
「ついこの前も洗面の方が水漏れ起こしたって言ってたでしょ」
アリシア:
「そ、それは第一発見者がたまたまあたしだっただけで……」
ジェイコブ:
「ほれ、のんきに話してると遅刻すんぞ」
ケイト:
「いけない!
それじゃ、ありがたく使わせてもらうわね」
ジェイコブ:
「おう。
……ついでに今日他の水回りもチェックしとくか……。
ガキがしでかしてるかもしんねえし」
アリシア:
「だーかーらー!あたしはやってなーい!」
サマンサ:
「うふふ……」
アーサー:
「……おはよう」
ジェイコブ:
「こっちはこっちで相変わらずテンション低いな~~……」
アーサー:
「アリシアの声で目が覚めた」
ジェイコブ:
「あのガキ一人でニワトリ7匹分の騒音だからな」
アーサー:
「何騒いでたんだ?」
ジェイコブ:
「トイレが水漏れしたんだ」
アーサー:
「えっ!まずいな。業者呼んだ?」
ジェイコブ:
「呼ぶわけねえだろ、俺がいるんだから。
俺にかかればちょちょいのちょいだ」
アーサー:
「ジェイコブ、器用だからな」
ジェイコブ:
「あんなん簡単だ」
アーサー:
「どう、バンドはうまくいってる?」
ジェイコブ:
「解散した」
アーサー:
「え?」
ジェイコブ:
「……」
アーサー:
「解散した?」
ジェイコブ:
「ああ、解散した。
クソ野郎をぶっ飛ばしたら喧嘩になってあっさり解散だ。
せいせいすらあ」
アーサー:
「せいせいって……」
ジェイコブ:
「俺はな、別にメジャーレーベルなんざ興味ねえんだ。
確かに金は入るし、宣伝も自分たちでやらなくて済む。
ところがあのクソ野郎ときたら、口を開けば二言目には金が金がって言うからよ。
そんなに金が欲しかったらてめえでやれっつったらもう殴り合いだ」
アーサー:
「これからどうするんだ?」
ジェイコブ:
「そこでだ。お前に話があるんだ」
アーサー:
「嫌な予感がするな。どうせ俺に入れとかいう話だろ?」
ジェイコブ:
「よく分かってんじゃねえか。
メンバーは集めてある。後はお前が入るだけだ」
アーサー:
「……気乗りしない」
ジェイコブ:
「安心しろって。
今回は完全にクリーンなメンバーだ。前とは違う」
アーサー:
「もうやる気はないんだ。
それに、知り合いにもっと適任がいるだろ?」
ジェイコブ:
「良いか、聞け。
あれから何年だ?2年も経つ。さすがに大丈夫だろ。
もうあんなことにはならねえ」
アーサー:
「……」
ジェイコブ:
「お前に代わる奴はこの世にいねえ。
何で好きなこともできず、縮こまって暮らさなきゃなんねえんだ?
堂々としてれば良いじゃねえか。
もう一度やろうぜ。な?」
アーサー:
「……仕事だ」
ジェイコブ:
「あっ、ずりいぞ!」
アーサー:
「(…………)」
「(2年か…………)」