#10 「偶然」

サマンサ:
「(……ええと……虚血性……きょけつ……きょ……)」

「(あっちかな……)」

「(……あった!
これと、それから……)」

ニュークレスト
フェーンパーク

「…………」

ジェイコブ:
「お?サマンサじゃん」

サマンサ:
「!ジェイコブ」

ジェイコブ:
「奇遇だな。何してんだこんなとこで?」

サマンサ:
「図書館で少し調べ物を」

ジェイコブ:
「図書館!?調べ物!?真面目か!
お前、今日は休みじゃないのか?」

サマンサ:
「そうだけど。
……休みの日に図書館行かない?」

ジェイコブ:
「あ?
ああ~行かねえ行かねえ!
足を踏み入れたこともねえ!
化石になっちまう」

サマンサ:
「ふふふ!」

ジェイコブ:
「たまには息抜きしろよ。
化石にならねえうちに映画でも観に行こうぜ」

サマンサ:
「うん、良いね!」

ジェイコブ:
「おう…………。…………」

サマンサ:
「……………………え?」

ジェイコブ:
「あ?
いや、こっちが聞きてえ。
俺はこれからってつもりで言ったんだが」

サマンサ:
「あっ、これからなの!?今度の話かと……。
でも、お仕事じゃ?」

ジェイコブ:
「まだ映画観るくらいは時間あんだよ。SF好きか?」

サマンサ:
「(……うわあ……二人っきり……!)」

ジェイコブ:
「……」

サマンサ:
「(何を話そう……)」

「……」

ジェイコブ:
「お前って……あんまりしゃべんねえよな」

サマンサ:
「そっ……そうかな」

ジェイコブ:
「誰かと違ってギャーギャー騒がねえし」

サマンサ:
「あー、でもゴキブリが出たときとかは騒ぐよ?」

ジェイコブ:
「いやいや、ゴキは騒ぐだろ」

サマンサ:
「そ、そっか。そうだよね」

「……」

ジェイコブ:
「……」

サマンサ:
「(……会話終了?
次、次、何を話そう!
話題……彼と話せる話題……)」

「そういえば、この前の水漏れの話だけど……」

ジェイコブ:
「ああ」

サマンサ:
「ジェイコブって器用なのね」

ジェイコブ:
「あれは誰でもできるぜ」

サマンサ:
「でも、何でも直しちゃうから」

ジェイコブ:
「ま、手先には自信あるぜ」

サマンサ:
「いつも助かってる」

ジェイコブ:
「おう」

サマンサ:
「……………………」

「(私、つまらない女なんだろうな)」

ジェイコブ:
「お前ってウィロー・クリークだっけか?」

サマンサ:
「はっ?何が?」

ジェイコブ:
「出身。ウィロー・クリークだろ?」

サマンサ:
「うん、ウィロー・クリーク」

ジェイコブ:
「どの辺?」

サマンサ:
「コートヤードレーンってところ。ゴス家と川を隔てた先にあるの」

ジェイコブ:
「おー、あっちの方か」

サマンサ:
「あ、知ってる?」

ジェイコブ:
「ああ。のどかで良いとこだな」

サマンサ:
「でも田舎よ」

ジェイコブ:
「俺のとこには負けるぜ」

サマンサ:
「ウィンデンバーグだったよね」

ジェイコブ:
「ああ。何もねえぞ」

サマンサ:
「そう?ハムとビールが美味しいって評判聞くよ。
ウィンデンバーグ小児病院もあるし。有名な大病院よ」

ジェイコブ:
「あそこか~……。俺あそこトラウマなんだ。
ガキの頃に入院したことあるんだが、それ以来医者と病院が苦手でな」

サマンサ:
「あ、本当?
じゃあ私のことも苦手?」

ジェイコブ:
「んん?
……お前、やっぱ面白えな」

サマンサ:
「えっ?」

ジェイコブ:
「さ、着いたぜ。SFで良いな?」

サマンサ:
「うん」

 

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