アリシア:
「あ~~~~~~っ!!
ちっくしょ、あと少しだったのにい!」
サマンサ:
「……」
アリシア:
「おかえりサマンサ。
こんな時間まで図書館にいたの?勉強熱心だねえ」
サマンサ:
「た、ただいま」
アリシア:
「おっおっ、きたきたきた!
今度はいける!」
サマンサ:
「はーーーーーーっ……」
「……」
「(神経使った……)」
「(浮かれてる、私)」
「(……でも……)」
「(きゃ~~っ!)」
「おかげで随分盛り上がった。
ありがとな。次もまた頼むよ」
ジェイコブ:
「次はいつだ?」
「7月くらいか」
ジェイコブ:
「了解。割と先だな」
「ちゃんと日にちが分かったら連絡するよ。
お前、バンド組まないのか?」
ジェイコブ:
「あん?」
「頼んどいてなんだが、お前ほどの腕前でサポートってもったいないぞ。
さっさと自分で起ち上げちまえば良いのに」
ジェイコブ:
「人数が足りなくてよ。
1人ギターがいれば良いんだが」
「ジャスティン辺りは?」
ジェイコブ:
「駄目だ。あいつは結婚してから付き合いが悪くなって……」
「へえ……あいつ結婚したんだ。
……知らなかったぜ」
ジェイコブ:
「相手は中学ん時のクラスメイトなんだとさ」
「そうかあ、あいつがね……俺もそろそろ身を固めるころかな」
ジェイコブ:
「……」
「お前は当分先だろ?」
ジェイコブ:
「……………………まあな!」
「というか、あの坊っちゃんはどうした?
あのバンドが再結成しないか、未だに話題になるぜ」
ジェイコブ:
「実はな、声掛けてんだ」
「おお!で、なんて?」
ジェイコブ:
「――ふう……」
「(確かにずっとサポートってわけにゃいかねえ。
それはもうとっくに分かってんだ。
アーサーが一言、俺もやるって言ってくれれば万々歳なんだが……、
やっぱ無理か?)」
「(……そりゃそうか。何言ってんだよって感じだよな。
もう一回何かあったら……)」
「(けど、それ言ってたら何もできねえ。
あんな場所に連れて行った俺は悪いが、あいつは何も悪くねえ。
悪いのは……)」
『……ジェイコブ……』
ジェイコブ:
「?……あ?」
「(…………誰もいない?気のせいか……。
いやでも確かにはっきり聞こえたぞ。20代前半の女子の声が)」
「(どうせあの暇なガキが俺を驚かそうって魂胆だ。
そのまま引っかかるのもムカつくし単純なあいつのことだから裏から回って……)」
「(で、この角なんだろ。
逆に張り倒してやらあ………)」
「(あん?なんだアレ?)」
「(光ってる……)」
「(ホタル……じゃ、ねえよな……)」
「(ん、消えた?俺の見間違いか……)」
「うおっ!!!何だ!?」
「……!?」
「!!!!???何だよアレは!!」
「(うっ……浮いてる!
なっ……マジかよ!?そんな馬鹿な……)」
「じょ、冗談だろ……!」
「……!!……!!!」
『収容完了。コレヨリ帰還シマス』
「アーサー」
「何も知らない……何も持たない……」
アーサー:
「……?!!」
「お前はまだ、自由を得たいと思うかね?」
アーサー:
「う、わ……っ」
「アーサー!」
サマンサ:
「アーサー!アーサー起きて!」
アーサー:
「……ふあ?」
サマンサ:
「ごめんね、起こしちゃって。
ジェイコブが帰ってこないの」
アーサー:
「ええ?
……んっ……今何時?」
ケイト:
「1時半」
アーサー:
「……1時半か。
大体22時過ぎには帰ってくるよな。
遅くなるようなこと、何か言ってたか?」
アリシア:
「うーうん。何も聞いてない。
遅くなる時はいつも連絡来るよねえ。電話してみよーか」
サマンサ:
「……私……、彼が仕事に行く前に一緒に映画館に行ったんだけど……」
アリシア:
「マジ!?先月オープンしたところっしょ!?
何観たの?」
サマンサ:
「……『宇宙船シミュレーターの大冒険』」
アリシア:
「フロッグメーン!ずるーい!」
サマンサ:
「……いや、そうじゃなくて。
特に変わったことは何も言ってなかった」
ケイト:
「電話してみましょ。すぐ出るでしょ」
アーサー:
「ああ……」
「……」
『……お客様のおかけになった電話番号は現在電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません……』
アーサー:
「……繋がらない」
サマンサ&ケイト:
「……」
アリシア:
「あ、あたし怖くなってきた、かも……。
最近多いじゃん?通り魔事件……」
サマンサ:
「まさか……」
ケイト:
「2人とも落ち着いて。
……ジェイコブよ?」
アーサー:
「そうだよ。電池が切れただけだと思う。
それに今頃どっかの女……ゲフン!
……友達の家にでも泊まってるさ」
アリシア:
「だね~。あいつのことだしぃ。
まあそのうち帰ってくるっしょ!それまでテレビでも観てよ~……」
サマンサ:
「……」
アリシア:
「ね、ねえ……サマンサ……泣いてる?」
ケイト:
「サマンサ」
「あの男のために涙流すなんてもったいないわよ!
ジェイコブは帰ってくるわ。大丈夫よ」
アーサー:
「……俺、あいつが行きそうな場所に行ってみるよ。
皆はここにいてくれ、すぐ戻る。
あの馬鹿野郎が戻ったら電話をくれ」