「アーサー・ベラミー。
出生地、オアシス・スプリングス。
死因、ドラッグによるオーバードーズ」
「……そうなるはずだった」
「全く忌々しい。お前もそう思わないか?」
「いっそ あのまま 死んでおけば 良かったのにな……」
アーサー:
「っ!!」
「……夢か…………」
「はあ……はあ………」
「最近同じ夢ばかり見ている」
「禍々しい姿をした『奴』が現れて、俺の生を拒み、死を誘い笑う」
「2年前、俺は……ドラッグの過剰摂取で病院に運ばれた」
「オアシス・スプリングスの実家では何不自由ない暮らしをし」
「名門アリッドリッジ校で『紳士』となるよう教育されたというのに」
「でも、家に縛られるのは嫌だった。自分の姓が嫌いだった。
もっと自由に生きてみたい。もっと外の世界を見てみたい」
「そうして手に入れた。
家名の盾に守られて得た自由を……」
ニュークレスト
オーク・アルコーブ
バート:
「あ~~~~~だるいよ~~~」
アーサー:
「……」
バート:
「帰りたいよ~~~、マジだるくないっすか?」
アーサー:
「……」
バート:
「ベラミー氏聞いてる?」
アーサー:
「聞いてるよ!ラストネームで呼ぶな!
俺だってだるいよ!3時間しか寝てねえよ!」
バート:
「何してたんすか?
てか、顔色悪いじゃん。帰った方が良いんじゃないの?」
アーサー:
「帰れるわけないだろ。
10時から会議だし午後はプレゼン」
バート:
「それで、今日も今日とてノーランドさんから怒られるのかあ」
アーサー:
「余計体調が悪化しそうだ」
バート:
「だよな~。
俺らアリッドリッジ校卒業生だぜ?
ウィンデンバーグ大学出身なんだぜ?
こんなとこでくすぶってて良いのかなー。
安定した給料に、申し分ない福利厚生。だけど夢がないときたよ。
ノーフューチャー!」
アーサー:
「そういえばお前も同じ学校だったんだって思うよ、いつも」
バート:
「異端児扱いで迫害されかかりました、てへ!」
アーサー:
「アリッドリッジは厳しかったからな」
バート:
「だけどお前は迫害対象じゃなかった」
アーサー:
「『竜の子』だからって特別扱いされるわけじゃない。
たまたま怒られなかっただけだ」
バート:
「まさか。ベラミー家を迫害だなんて正気じゃないね」
アーサー:
「……」
バート:
「はあ……俺がやりたかったのって本当にこの仕事なのかなあ」
アーサー:
「どうした?」
バート:
「自分のやりたいことが他にある気がするんだ。
周りの同世代の奴らはもっと生き生きしてるよ。
……あー、刺激が欲しい」
アーサー:
「刺激……例えば?」
バート:
「……会社を辞めて山籠もり」
アーサー:
「何だそれ?」
バート:
「可愛い子と結婚して、夫婦でアパレルブランドを立ち上げる」
アーサー:
「要するに会社辞めたいってことか?
そういう意味なら刺激なんて必要ない」
バート:
「変わってるよ」
アーサー:
「誰が?」
バート:
「エリアマネージャーさん」
アーサー:
「何が変わってる?」
バート:
「働くなら本社だろ~!
それがわざわざこんなちっぽけな支社勤務希望なんて……変わってるよ」
アーサー:
「ハハハ。お前はどうなんだ」
バート:
「俺は本社希望したんだよ。
本社の方が大きな仕事があって可愛い子も多分多い。
でも通らなかった。
お前なら希望が通ったはずだ」
アーサー:
「いや、そんなことは」
バート:
「いいや、そんなことは『ある』!」
アーサー:
「別に俺は……ニュークレストが良かったから……。
それに、ここだって重要な拠点だ。本社と大して変わらないよ」
バート:
「何でだよ!ああ、もったいねえ~!
付き合い長いけど未だに俺はお前が分からない。
けど、その昇進っぷりだと近いうち絶対本社から声が掛かるぞ」
アーサー:
「大して実績上げてないのに」
バート:
「謙遜するな。お前は偉くなるって。
だから頼む。本社に提案してくれよ。
こっちに可愛い女の子よこせって!」
アーサー:
「ハハ、そんなこと言えるか!
(ていうか、俺、お前の上司なんだけどな……)」