ブリジット:
「(ここかあ)」
アリシア:
「ねー、今度皆でグラニット・フォールズ行かない?」
ケイト:
「キャンプしに?」
アリシア:
「そう。ブリジットも誘って皆で!」
サマンサ:
「良いね!」
アリシア:
「8月とか良くない?
でさ、ロッジは……」
ケイト:
「夏は忙しくなりそうなのよ」
アリシア:
「……ガ、ガーン現実ゥ……。
じゃ、じゃあどうしよ……。
新人も来るし、練り直すかなあ」
サマンサ:
「あ!ブリジット来た!」
「いらっしゃい!
夜中はごめんね……アーサー来たでしょ?」
ブリジット:
「ううん!ちょうど起きてたから。
それよりアーサーがちゃんと帰れたか心配だったよ。
ジェイコブも、帰ってきた?」
サマンサ:
「うん!
あ、ここで話すより中に入って」
アリシア:
「ブリジット~!」
「ささ、適当に好きなとこ座って!」
ケイト:
「待ってたわよ。今お茶を入れるわね」
ブリジット:
「ありがとう」
ケイト:
「皆揃ってなくてごめんなさい」
アリシア:
「別に良いよね~?あいつらなんかいなくたって!
今日は女子会っしょ?女子会!」
ブリジット:
「ふふ……。
でも、本当に何事もなくて良かったね」
サマンサ:
「うん、ほっとした……」
アリシア:
「まともに心配してたのはサマンサぐらいだよ。
泣いて心配してくれる人がいるんだから、あいつも改心すると良いけど」
サマンサ:
「え、だ、だって!最近物騒でしょ」
ブリジット:
「そうだね。このところ刃物犯罪が多いから心配だった。
結局帰りが遅かっただけ?」
サマンサ&アリシア:
「「ん~……」」
ブリジット:
「?」
ケイト:
「はい、どうぞ」
ブリジット:
「ありがとう」
アリシア:
「てか、うちらの話題はもはやジェイコブじゃなくて新人の噂なんだ」
ブリジット:
「新人?」
アリシア:
「そ!新しいフラットメイトが近々やってくるんだよ」
ブリジット:
「そうなんだ。募集したの?」
サマンサ:
「大家さんがね。
元々ずっと1人分空きがあって……。
大家さん情報だと、私たちと同じくらいの歳で男の人。
後は来てからのお楽しみ、って」
ブリジット:
「どんな人だろう。良い人だと良いね!」
サマンサ:
「うん!」
ブリジット:
「新しい出会いってわくわくしない?
私もシェアハウスにしても良かったかも。色んな人と出会えるもんね」
アリシア:
「そしたらブリジットもこっち来れば良いじゃん!」
ブリジット:
「でも、定員オーバーでしょ?」
アリシア:
「そんなことないよ~。ジェイコブ追い出せば良いんだし」
ブリジット:
「あ、そんな酷いこと言って!ふふふ」
ケイト:
「あっ」
ブリジット:
「?」
ケイト:
「話続けてて。私、会社から電話が」
ブリジット:
「ケイト、忙しそう」
サマンサ:
「異動になってから大変みたい」
ブリジット:
「ケイトってセイウチ・ブックスの」
サマンサ:
「うん。ジャーナリストよ」
ケイト:
「……ごめんなさい。
私、呼び出されちゃった」
アリシア:
「嘘ぉ~、今からあ!?」
ケイト:
「ええ……。本当にごめんなさい」
ブリジット:
「また今度ゆっくり、ね?」
ケイト:
「ええ」
ブリジット:
「…………残念」
アリシア:
「呼び出しとか最悪~」
ブリジット:
「バリバリで格好良いなあ」
アリシア:
「ケイトはいつでも格好良いっすよ」
サマンサ:
「バリバリの仕事人間」
アリシア:
「サマンサには言われたくないと思うのう……」
サマンサ:
「そう?」
ブリジット:
「ね、皆のお仕事は最近どんな感じ?」
サマンサ:
「私は相変わらず。
研修医にとっては毎日が勉強よ」
アリシア:
「おー、余裕の発言」
サマンサ:
「え、全然!余裕なんかないよ。
1週間夜勤が続いたときは気持ち悪くなったのよ……。
体力はある方だけど、ちょっとしんどかった」
アリシア:
「しんどいとか言いつつ、毎回けろっとした顔で帰ってきてます~」
サマンサ:
「けろっとしてても中身はへろへろだよ?」
ブリジット:
「きつそう……」
サマンサ:
「うーん。でも、残業はほとんどないのよ。
逆に勤務時間がきっちり決められてるから、そっちの方が辛いかな」
ブリジット:
「時間内に片づけないといけないのね」
サマンサ:
「そう。でも片付かないんだけどね、うふふ。
できなかった分は後のチームに引き継ぐんだけど、上からガミガミ言われるの。
『何ちんたらやってんだ!』って」
ブリジット:
「お局みたいな人に?」
サマンサ:
「そうそう、恐ろしい指導医にね。
けど、こんなのでへこたれてられない。
今の研修は来年で終わりだから、それまで色々吸収しなくちゃ。
それが終わったら今度は専門医の研修が始まるけど、何とか頑張る」
ブリジット:
「頑張ってるサマンサ好きだけど、無理だけはしちゃ駄目だからね。
たまに気晴らしにこうやって女子会開こ」
サマンサ:
「ありがと。
だけど、修行中の身としては多少は無理しないとね。
それはブリジットも同じでしょ?」
ブリジット:
「そうだね。私も来年まで修行。
思ったより事務処理が多くて座りっぱなしなんだ。
先輩がせわしなくしてるの見るとついていきたくなっちゃう」
サマンサ:
「へえ、そうなんだ。
……じっとしてるより、街中走り回ってる方がブリジットらしい」
ブリジット:
「でしょ!一刻でも早く一人前になりたいよ」
「アリシアは?」
アリシア:
「あたし?、は………………まあ良いじゃないすか」
ブリジット:
「え~?画家さんのお仕事興味あるのに」
アリシア:
「だってあたしはほら、2人みたいに人の役に立つ仕事じゃないっていうか……。
パレット洗ってるだけだし……」
ブリジット:
「何を洗ってる?」
アリシア:
「パレット……。
画家って言っても、仕事で描かないもん。
朝から晩までパレット洗いですよ。しょぼん」
ブリジット:
「そんなこと!
パレット洗いだって立派なお仕事だよ。
それに、私の伯母さんを助けてくれたじゃない!
伯母さん退院したんだけどね、お店の絵を見てすっごく喜んでたんだよ。
お客さんにも好評なんだ。
アリシアの絵がなくなったら、伯母さんもお客さんも悲しんじゃう」
アリシア:
「ほえ……」
ブリジット:
「あっ!!」
アリシア:
「ぬお!?」
ブリジット:
「お客さんと言えば!お店の常連に有名な画家さんがいるの。
この間来た時、アリシアの絵を褒めてた」
アリシア:
「えっ、有名な画家!?誰?」
アーサー:
「……」
サマンサ:
「あ、アーサーが帰ってきた」
ブリジット:
「アーサー!」
アーサー:
「……ブリジット!」
ブリジット:
「今ね、女子会開いてるの」
アリシア:
「ってことでアンタは対象外なわけ」
アーサー:
「……はいはい」
ブリジット:
「アーサーもどうぞ」
アーサー:
「やめとく」
ブリジット:
「そっか」
アリシア:
「何しに来たんだ、あいつ?」
サマンサ:
「さすがに疲れてるよね……。
あー、失敗した。お願いしなきゃ良かった」
ブリジット:
「ゆっくり休んでほしい……」
アリシア:
「それより、続き続き!」
ブリジット:
「あ、有名な画家さんね。
イアン・ターナーさん」
アリシア:
「……んっ?何?」
サマンサ:
「……」
ブリジット:
「イアン・ターナーさん。
印象派の画家さんなんだけど、アリシア知らない?」
アリシア:
「…………マジ?
…………マジ~~~~~!!?」
ブリジット:
「本当!」
サマンサ:
「初耳……。
じゃ、この辺りに住んでるのかな?」
ブリジット:
「だと思う。
お店を手伝う前に常連さんのことは伯母さんから聞いてるんだ。
常連さんのことは特に大切に、失礼のないようにしなさいって」
アリシア:
「あの、そんでさ……なっ……何て言ってた?あたしの絵……」
ブリジット:
「大胆で独創的だって」
アリシア:
「そっ……そっか~!えへへへへへ!!」
サマンサ:
「やったね」
ブリジット:
「うんうん。
だからアリシア、パレット洗いだからって卑下しちゃ駄目。
イアンが認めてくれてるんだもん。自信持たなきゃ!」
アリシア:
「うん。そだね。
……ありがとう、ブリジット」