アーサー:
「迎えに行くって言ったのに!」
ブリジット:
「楽しみすぎて待ってられなかったの!
飛び出してきちゃった」
アーサー:
「ハハハ!君らしいな。
飛び出してきたんだ?」
ブリジット:
「そう!だから早く行きましょ!
せっかくのデートじゃない」
アーサー:
「そんなに急がなくても、映画館は逃げないよ」
ブリジット:
「ほら、早く早く!」
「ヨガ体験の終わりに、アーサーから映画に誘われた。
勿論行くでしょ」
ケイト:
「(うーん……)」
「(これだと地味すぎるかしら。
いっそ、あのマネキンみたいなのは……)」
「(……あら?あれは……)」
ブリジット:
「大盛況だったね!」
アーサー:
「公開から時間経ってるのにな。座れて良かった」
ブリジット:
「本当に!
それに、評判通り面白い映画だった!」
アーサー:
「(本当はスティル・ライフを観る予定だったんだけど……)」
『ブリジット、何が観たい?
俺は、あの……
(恋愛映画なんて、わざとらしいかな)』
ブリジット:
『『女の復讐』が観たい!
アーサーは?』
アーサー:
『え……。
うん、『女の復讐』面白そうだよな』
「(……まあ、ブリジット、喜んでくれたみたいだし、良いか)」
「……途中ヒヤヒヤしたよ」
ブリジット:
「ふふふ、復讐のシーンでしょ?
アーサーと後ろに座ってた人、同じタイミングで声上げるんだもん。
シリアスなシーンなのにおかしくて笑っちゃった」
アーサー:
「ごめん、つい」
ブリジット:
「ふふっ、スリル満点だったからね。
ねえ、最後のシーンの意味分かった?」
アーサー:
「うーん……ちょっと難しかったな」
ブリジット:
「色んな意味に取れるよね。
あの後、ジムはどうなったんだろう」
アーサー:
「……死んだんじゃないか?」
ブリジット:
「そう?」
アーサー:
「あれだけ大勢に追われてるんだ。それに怪我してる。
普通に考えたら逃げ切れるもんじゃない」
ブリジット:
「そっか……」
アーサー:
「あ、いや、俺がそう思っただけだから。
ブリジットはどう思う?」
ブリジット:
「うん……」
「私は、生きてると思う」
「ジムが渡そうとしていた花束がね、マルタの部屋にあったでしょ。
だからきっと……ジムは彼女のところに戻ってきたのよ」
アーサー:
「そんなシーンあったっけ?」
ブリジット:
「最後、一瞬だけ」
アーサー:
「(よく見てるな)
そうか。すると、生きてるかもな」
ブリジット:
「うん、生きててほしい!」
アーサー:
「ハハハ。映画だからな」
ブリジット:
「映画でも」
アーサー:
「……そうだな。生きていてほしい」
ブリジット:
「うんうん。
マルタ、綺麗だったなあ~。
コーデリアさんが出る映画って外れがないよね」
アーサー:
「…………」
ブリジット:
「どうかした?」
アーサー:
「いや何でもない。
良い映画だった。すごく楽しめた」
ブリジット:
「私も!」
アーサー:
「君と一緒だったから楽しかったのかも」
ブリジット:
「そう?何だか照れるな……。
また、行きましょう?」
アーサー:
「ああ」
ブリジット:
「この後どうしよっか」
アーサー:
「帰るにはまだ早すぎるな」
ブリジット:
「じゃあ、おうちに帰る前に、ちょっと寄り道していかない?」
アバリス・エーカー
アーサー:
「こんなところあったんだ……」
ブリジット:
「えっ、有名な泉だよ。
1シムオリオン投げると……」
アーサー:
「……願いごとが叶うってやつか」
ブリジット:
「うん!
ほら、こんなに透き通ってて綺麗」
アーサー:
「……」
ブリジット:
「コイン投げてみない?」
アーサー:
「ああ」
ブリジット:
「アーサーの願いごとは?」
アーサー:
「仕事がうまくいきますように、かな。
ブリジットは?」
ブリジット:
「私?私は……秘密!」
アーサー:
「ずるいよ。俺は言ったんだから教えろよ」
ブリジット:
「諸々のことをお願いしたの!」
アーサー:
「1シムオリオンで諸々のことをお願いするなよ……」
ブリジット:
「ふふふ」
アーサー:
「……」
ブリジット:
「……」
アーサー:
「……ブリジット、今更だけどさ……。
俺、こういうのよく分からないっていうか……さっぱりなんだ。
その……デートって言っても……どう振舞えば良いのか」
ブリジット:
「良いじゃない。分からなくて」
アーサー:
「……え?」
ブリジット:
「こうして一緒にいられるだけで私は嬉しいから、それで充分。
会うだけで良いの」
アーサー:
「…………俺も一緒にいられるだけで嬉しい」
ブリジット:
「ありがとう。
改めて言うとちょっと恥ずかしいね」
アーサー:
「そうだな」
ブリジット:
「でも元気そうで良かった。ほっとした。
ずっと会えなかったからどうしてるかなって思ってた。
ウィンデンバーグでのこと、ちゃんと聞けてなかったし……」
アーサー:
「……」
ブリジット:
「大丈夫。
今、周りに誰もいないから」
アーサー:
「ああ、ドラッグなんてもう二度とやらない。
ブリジットたちには、随分心配かけたよな」
ブリジット:
「心配なんてもんじゃなかった!」
アーサー:
「ごめん」
ブリジット:
「身体はもう良いの?」
アーサー:
「そのことなら大丈夫。
もう何ともないよ。すっかり元気だ。
木のポーズ、ちゃんとできてただろ?」
ブリジット:
「ふふ、そうだった」
「でも……どうしてそんなパーティーに参加したの?」
アーサー:
「……どうしてって……言わなかったか?
友達に誘われたんだ」
ブリジット:
「お友達……ジェイコブ?ケイト?」
アーサー:
「…………。
違う。君の知らない人だ」
ブリジット:
「それじゃあ、その人に勧められたの?」
アーサー:
「ああ。
……いや、違う人?に……かな。
ごめん、覚えてないんだ」
ブリジット:
「……?
参加する前からやってた?」
アーサー:
「いや、初めてだよ」
ブリジット:
「……初めてなのにオーバードーズになるまで?
まさか無理やり摂取させられたんじゃないでしょ?」
「……アーサー?」
アーサー:
「ええと……。
……ハハハ。何だか、取り調べみたいだ」
ブリジット:
「あ……ごめんね」
アーサー:
「…………ブリジット。
俺はあの時、世間知らずで馬鹿だった。
それだけのことだ」
「家のことを忘れられて、気が大きくなってしまったんだ。
誰にとやかく言われることもない。
とにかく楽しくて、騒げるだけ騒げる……」
「いつまでも『自由』に浸れる世界が欲しかった」
ブリジット:
「……」
アーサー:
「心配いらないよ、ブリジット。
今後関わることは絶対にないんだから」
ブリジット:
「また送ってもらっちゃったね」
アーサー:
「エイリアンにさらわれたら大変だからな」
ブリジット:
「ふふ!
今日は楽しかった。
たくさんお話できて嬉しかったよ」
アーサー:
「でも、いくら話しても話し足りない気がするな」
ブリジット:
「ふふふ!本当だね、私もそう。
……それじゃ、アーサー、また。
おやすみなさい」
アーサー:
「……ブリジット」
ブリジット:
「!」
アーサー:
「……おやすみ。また、今度」