サマンサ:
「(ああ、身体がふらついてしょうがない)」
「(あのジェラートは食べやすくてありがたかったけど……。
すぐまた気持ち悪くなっちゃう。
もう今日は休もう……)」
ジェイコブ:
「よっ」
サマンサ:
「!」
ジェイコブ:
「もう体調は良いのか?」
サマンサ:
「……大丈夫」
ジェイコブ:
「そうか。良かったな。
って…………本当か?」
サマンサ:
「……」
「部屋で少し話せない?」
ジェイコブ:
「…………」
サマンサ:
「…………」
ジェイコブ:
「そう、か……」
サマンサ:
「安心して。
責任取って、なんて言わないから。
だけど……色々考えたんだけど私、生みたいの」
ジェイコブ:
「……ああ……良いんじゃねえか?」
サマンサ:
「(何よそれ)」
ジェイコブ:
「仕事行ってくるわ」
サマンサ:
「………………」
「(今のは何?
つまり……『勝手に生めば?』……ってこと?
生んでも生まなくてもどうでも良いってこと?)」
「(…………ほら、ブリジット。
思った通りだよ)」
「(これなら、ただ眺めていた方が幸せだった)」
ケイト:
「おかえりなさい。
結構降ってるわね」
アーサー:
「うん。
おかげで傘買うはめになっちゃったよ」
ケイト:
「え!?買ったの!?」
アーサー:
「だって、かなり降ってるぞ。
買った物を濡らしたくない」
ケイト:
「あなた、車で行ったんじゃなかったの?」
アーサー:
「あそこまでの距離なら車はいらないよ。
あと、これ……」
「ソースはいつものがなくてさ。
違うやつだけど良い?」
ケイト:
「ええ。ありがとう。
便利屋扱いしちゃってごめんなさい」
アーサー:
「外出たついでだったから良いよ。
ないと困るしね」
「……」
ケイト:
「『疲れてるだけ』だって」
アーサー:
「……ゼリー買ってきたんだけど、サマンサにあげてよ。
アリシアに全部食べられる前に」
ケイト:
「ふふふ。分かったわ。
後で声掛けとく」
イアン:
「おかえりー」
アーサー:
「ただいま。
皆、今夜のくつろぎ場所はここなんだ」
イアン:
「下でしゃべってたら、サマンサに悪いでしょ」
アリシア:
「アンタ、しーっ!だからね!しーっ!」
アーサー:
「(お前だよ)」
イアン:
「で、ジェイコブはまだなわけだね」
アーサー:
「みたいだ」
アリシア:
「いつものことっすよ」
イアン:
「仕事の後の一杯?」
ケイト:
「エイリアンにさらわれてるんでしょ、どうせ」
イアン:
「エイリアン??」
アーサー:
「泊まるなら泊まるで事前に言ってくれと毎回……。
メールしようか?」
アリシア:
「もうしなくて良いんじゃん?
時間の無駄~。放っとけ放っとけ~」
ケイト:
「賛成。
外の黒板にどっかに泊まんなさいって書くわ」
アーサー:
「…………」
ジェイコブ:
「…………」
「なに難しい顔してんの~?」
ジェイコブ:
「あん?」
「んもう。全然喋らないから」
ジェイコブ:
「無口な俺、最高だろ」
「うふふっ。
今日、いつもより気合入ってたじゃん。
何か良いことあった?」
ジェイコブ:
「まあな。
……………………」
「ほらあ~、また黙る!!」
ジェイコブ:
「ハハハ!
一応俺もな、考えなきゃなんないことがあんだよ」
「ええ~!?何を~!?」
「(今のままじゃ、とてもじゃないがやっていけねえ。
さて、どうするか……)」
「そんな真剣に?
それより、そろそろ場所替えない?」
ジェイコブ:
「……」
「(来た。俺を誘惑してる。
顔と良い身体と良い、このクラスの女子にはそうそうお目にかかれん。
それに加え、一切後腐れなしとみた。
これを逃す手はねえ。
女の服を脱がすのは簡単だ。
この後、いつも通りに適当な場所で適当にウフフする)」
「(今までの俺だったらな)」
「……都合の良い女か……」
「え?
ちょっと、どこ行くの?」
ジェイコブ:
「帰るんだ」
「は?帰る?」
ジェイコブ:
「悪いな。そこで一人でしてな」
「は……!?」
ジェイコブ:
「(……降ってんな~)」
「あっ!!」
「(鍵がねえ!!
ん?あれ?おろ?
……ねえな……)」
「(んなはずは…………。
や、待てよ……)」
「(あ~、しまった。部屋だわ……。
置きっぱなしで出かけちまったのか。
ま、アーサーに電話すりゃ良いな。
許せアーサー)」
「…………」
「…………」
「(出ねえし!!)」
「チッ……」
「ん?」
『門限破りは頭を冷やすこと』
「(なっ……んだこれは!!)
おい!
ケイト!!!!アリシア!!
起きてんだろ!?そこにいるんだろ!?
開けろ!馬鹿!」
「(くそ………………。
この分じゃアーサーもケイトたちに出るなって言われてるに違いねえ)」
「(それなら……ヒヒヒ)」
「おーい、アーサー!
お前の愛するブリジットの家に泊まりに行くぞ~!?」
「……」
「本当に行くぞ~!
あんなこともそんなこともどんなこともするかもしんねえぞ~!?
良いな、良いんだな!?」
「……」
「(……何て奴らだ……)」