#25 「罰」

サマンサ:
「(ああ、身体がふらついてしょうがない)」

「(あのジェラートは食べやすくてありがたかったけど……。
すぐまた気持ち悪くなっちゃう。
もう今日は休もう……)」

ジェイコブ:
「よっ」

サマンサ:
「!」

ジェイコブ:
「もう体調は良いのか?」

サマンサ:
「……大丈夫」

ジェイコブ:
「そうか。良かったな。
って…………本当か?」

サマンサ:
「……」

「部屋で少し話せない?」

ジェイコブ:
「…………」

サマンサ:
「…………」

ジェイコブ:
「そう、か……」

サマンサ:
「安心して。
責任取って、なんて言わないから。
だけど……色々考えたんだけど私、生みたいの」

ジェイコブ:
「……ああ……良いんじゃねえか?」

サマンサ:
「(何よそれ)」

ジェイコブ:
「仕事行ってくるわ」

サマンサ:
「………………」

「(今のは何?
つまり……『勝手に生めば?』……ってこと?
生んでも生まなくてもどうでも良いってこと?)」

「(…………ほら、ブリジット。
思った通りだよ)」

「(これなら、ただ眺めていた方が幸せだった)」

 

ケイト:
「おかえりなさい。
結構降ってるわね」

アーサー:
「うん。
おかげで傘買うはめになっちゃったよ」

ケイト:
「え!?買ったの!?」

アーサー:
「だって、かなり降ってるぞ。
買った物を濡らしたくない」

ケイト:
「あなた、車で行ったんじゃなかったの?」

アーサー:
「あそこまでの距離なら車はいらないよ。
あと、これ……」

「ソースはいつものがなくてさ。
違うやつだけど良い?」

ケイト:
「ええ。ありがとう。
便利屋扱いしちゃってごめんなさい」

アーサー:
「外出たついでだったから良いよ。
ないと困るしね」

「……」

ケイト:
「『疲れてるだけ』だって」

アーサー:
「……ゼリー買ってきたんだけど、サマンサにあげてよ。
アリシアに全部食べられる前に」

ケイト:
「ふふふ。分かったわ。
後で声掛けとく」

 

 

イアン:
「おかえりー」

アーサー:
「ただいま。
皆、今夜のくつろぎ場所はここなんだ」

イアン:
「下でしゃべってたら、サマンサに悪いでしょ」

アリシア:
「アンタ、しーっ!だからね!しーっ!」

アーサー:
「(お前だよ)」

イアン:
「で、ジェイコブはまだなわけだね」

アーサー:
「みたいだ」

アリシア:
「いつものことっすよ」

イアン:
「仕事の後の一杯?」

ケイト:
「エイリアンにさらわれてるんでしょ、どうせ」

イアン:
「エイリアン??」

アーサー:
「泊まるなら泊まるで事前に言ってくれと毎回……。
メールしようか?」

アリシア:
「もうしなくて良いんじゃん?
時間の無駄~。放っとけ放っとけ~」

ケイト:
「賛成。
外の黒板にどっかに泊まんなさいって書くわ」

アーサー:
「…………」

ジェイコブ:
「…………」

「なに難しい顔してんの~?」

ジェイコブ:
「あん?」

「んもう。全然喋らないから」

ジェイコブ:
「無口な俺、最高だろ」

「うふふっ。
今日、いつもより気合入ってたじゃん。
何か良いことあった?」

ジェイコブ:
「まあな。
……………………」

「ほらあ~、また黙る!!」

ジェイコブ:
「ハハハ!
一応俺もな、考えなきゃなんないことがあんだよ」

「ええ~!?何を~!?」

「(今のままじゃ、とてもじゃないがやっていけねえ。
さて、どうするか……)」

「そんな真剣に?
それより、そろそろ場所替えない?」

ジェイコブ:
「……」

「(来た。俺を誘惑してる。
顔と良い身体と良い、このクラスの女子にはそうそうお目にかかれん。
それに加え、一切後腐れなしとみた。
これを逃す手はねえ。
女の服を脱がすのは簡単だ。
この後、いつも通りに適当な場所で適当にウフフする)」

「(今までの俺だったらな)」

「……都合の良い女か……」

「え?
ちょっと、どこ行くの?」

ジェイコブ:
「帰るんだ」

「は?帰る?」

ジェイコブ:
「悪いな。そこで一人でしてな」

「は……!?」

 

ジェイコブ:
「(……降ってんな~)」

 

あっ!!

「(鍵がねえ!!
ん?あれ?おろ?
……ねえな……)」

「(んなはずは…………。
や、待てよ……)」

「(あ~、しまった。部屋だわ……。
置きっぱなしで出かけちまったのか。
ま、アーサーに電話すりゃ良いな。
許せアーサー)」

「…………」

「…………」

「(出ねえし!!)」

「チッ……」

「ん?」

門限破りは頭を冷やすこと

「(なっ……んだこれは!!)
おい!
ケイト!!!!アリシア!!
起きてんだろ!?そこにいるんだろ!?
開けろ!馬鹿!」

「(くそ………………。
この分じゃアーサーもケイトたちに出るなって言われてるに違いねえ)」

 

「(それなら……ヒヒヒ)」

おーい、アーサー!
お前の愛するブリジットの家に泊まりに行くぞ~!?

「……」

本当に行くぞ~!
あんなこともそんなこともどんなこともするかもしんねえぞ~!?
良いな、良いんだな!?

「……」

「(……何て奴らだ……)」

 

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