#26 「悲傷」

アーサー:
「ジェイコブ、どうしたかな……。
昨日のはさすがにどうかなと思うけど」

ケイト:
「良いのよ。
門限破るのこれで何回目だと思ってるのよ。
あれくらいやれば少しは反省するでしょ」

アーサー:
「そうかな……」

アリシア:
「効き目なさそ~」

イアン:
「どこで寝たんだろう」

ケイト:
「シグザム星でしょ」

サマンサ:
「……」

アリシア:
「お……。大丈夫?」

サマンサ:
「おはよう。
もう平気。心配かけてごめんね。
アーサー、ゼリーありがとう。
美味しかった」

アーサー:
「あ、うん……」

ケイト:
「今日は仕事は?」

サマンサ:
「勿論行く」

ケイト:
「でも、まだ本調子じゃないでしょ。
休めないの?」

サマンサ:
「うん」

イアン:
「辛いな……」

アリシア:
「頑張っちゃって、また体調崩しちゃうよう……」

イアン:
「そうなる前にどこかでリフレッシュしなきゃ」

アリシア:
「オッホン!
やはり休みは重要!!ということですね!!
2泊3日で予定空く?」

アーサー:
「は?急に何を」

アリシア:
「や……や~だなあ。
キャンプ行こうって前言ったじゃん。
アンタはどうせ、ぼーっとしてて聞いてなかったんでしょ。
グラニット・フォールズの澄んだ空気と美しい自然に心癒される2泊3日……」

ケイト:
「旅行会社の宣伝文句みたいね」

イアン:
「グラニット・フォールズかあ!
これからの季節なら特に良さそうだね」

アリシア:
「ですよねですよね!?」

ケイト:
「言っとくけど2泊なんて無理よ」

アリシア:
「うっ……。
じゃあ1泊2日!」

ケイト:
「それなら、まあ……何とかね」

アリシア:
「サマンサは?」

サマンサ:
「私は……」

「分かんない……」

アリシア:
「え~っ」

アーサー:
「皆お前みたいに暇じゃない」

アリシア:
「な、何だって~!?」

アーサー:
「仕事行かなくちゃ」

ケイト:
「そうね」

アリシア:
「あっ、ずるい!
何だよ、皆ノリ悪いなあ~!」

サマンサ:
「(ジェイコブ、まさか昨日他の子と寝たの?
私の話聞いて、そういうことできるんだ)」

「(一人で有頂天になって馬鹿みたいだった。
映画に誘われて、デートに誘われて。
あの夜に囁かれた言葉に我を失って。
本当に馬鹿みたい)」

「(『ああいう』子たちはあれをどう受け止めてるの?
笑って流せる?冗談みたいに。
私にはできない)」

ジェイコブ:
お前、面白えな

サマンサ:
「(彼から見れば、私は騙しがいのある女で面白かっただろうな。
面倒で、重いって)」

「(産休を取得することはできる。
同期より大きく遅れを取ってしまうことになる。
それはもう仕方がないけど)」

「(妊娠というのは、もっと幸せな気持ちになるものだと思ってた。
どうしてこんなに思い悩まなければいけないの?
どうしてこんなかたちで……)」

「(悩むより考えよう。
とにかく今一番大事なのはお腹の子。
なんと言われようと生む。
だけど、どうするの?)」

「また選択肢が浮かんだ。
前より少ない選択肢の中から、迷いなく一つ取り出した」

「フラットを出る」

 

Leave a Reply