#28 「嫌いになれない」

ケイト:
「ね?驚いたでしょ。
今荷造りしてるわよ。
来週、ウィロー・クリークに戻るんですって。
急な話で……」

「……?」

ジェイコブ:
「……」

「引っ越すのか?」

サマンサ:
「……」

ジェイコブ:
「何で急に……」

サマンサ:
「…………」

ジェイコブ:
「黙ってちゃ分からねえだろ」

サマンサ:
「…………暮らせる?」

ジェイコブ:
「……あ?」

サマンサ:
「今まで通り同じように接してくれる?」

ジェイコブ:
「…………。
ちょっと待てよ。
その前にお前に話が……」

サマンサ:
「良いの。
私が軽率だっただけだから。
でも、もうここにはいられない。
だから出てく。それだけ。
迷惑かけないから……」

ジェイコブ:
「おい……」

サマンサ:
「妊娠してごめんね」

ジェイコブ:
「おい、サマンサ!」

サマンサ:
「ううっ…………う……」

「(馬鹿だな私。
悲しくて悔しいのに。
何でまだ彼を嫌いになれないんだろう)」

ジェイコブ:
「開けてくれ。
サマンサ……」

サマンサ:
「……」

ケイト:
「……」

ジェイコブ:
「……」

ケイト:
「……」

 

「ジェイコブ。今日も頼むぜ」

ジェイコブ:
「おう」

 

 

「……フーッ」

あ、アレか?
アーサーの幼馴染っていう……

サマンサ:
はい。
サマンサです

ジェイコブ:
サマンサか。
俺は……

サマンサ:
ジェイコブ

ジェイコブ:
おっ!
何で知ってるんだ?
……ああ、アーサーから聞いたのか

サマンサ:
ううん。
前にライブに行ったことがあって、それで……。
CDも持ってる!

ジェイコブ:
おいおい、マジか。
貴重なファンだな

サマンサ:
妊娠してごめんね

ジェイコブ:
「……」

「ちょっとな、話あるんだ」

「話?」

ジェイコブ:
「おう。
俺のギャラ上げてくんねえ?
いくら何でも300は少ねえわ」

「いきなりかよ。
まあ、良いぜ。いくら?」

ジェイコブ:
「1250」

ぶっ……はは!!
……冗談かよ」

ジェイコブ:
「月4回200人集めて1人あたり1250シムオリオン。
妥当じゃねえの?」

「……あのさあ」

ジェイコブ:
「マジだ」

「お前のセンスは買ってるよ。
けど1250なんて払えない。
そもそも200人なんて集まるわけないだろ」

ジェイコブ:
「そこを集めんだよ、お前」

「無茶だ。
それこそ、ベラミーんとこの坊っちゃんでも呼ばないと」

ジェイコブ:
「だったら他に行っても良い。
ちょうど新しくバンドを組むことになったからな」

「ちょ、ちょっと勘弁してくれよ……。
話が違う。
急に抜けられても困る。
お前とは喧嘩したくない」

ジェイコブ:
「俺もしたくねえ。
じゃあ500だ。
正直500も稼げねえようじゃしょうがねえ」

「500……」

ジェイコブ:
「じゃあ800」

500で!

ジェイコブ:
「よし、決まりだ。
後な、ちょっと相談があるんだ」

「な、何だよ。
まだあるのか?」

ジェイコブ:
「実はな……」

 

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