ブリジット:
「またニュークレストに朝がやってくる」
「でも今日はいつもと違う朝」
「……」
「(昔からアーサーは私の手にキスして挨拶してくれたけど……)」
「(でも、昨日のは……)」
アーサー:
「俺も一緒にいられるだけで嬉しい」
「(……)」
ジェイコブ:
「はよ」
サマンサ:
「お、おはよう」
「……………………」
ジェイコブ:
「よう。起きてるか?
顔酷いぞ」
アーサー:
「分かってる」
ジェイコブ:
「そんなんじゃフラれるぞ」
アーサー:
「は?」
ジェイコブ:
「(ヒソヒソ……)
お前もやるじゃねえか。
ブリジットとデートしたんだって?」
アーサー:
「誰から聞いたんだ?……良いだろ別に」
ジェイコブ:
「どこ行ったんだ?」
アーサー:
「映画館」
ジェイコブ:
「パクんなよ」
アーサー:
「は?」
アリシア:
「新入り、いよいよ今週じゃん」
サマンサ:
「良い人だと良いけど」
ケイト:
「心配ないわよ。大家さんが選ぶんだから。
でも『もしかしたらびっくりするかも』ですって」
アリシア:
「びっくり?何それ?
びっくりするほどのイケメンってこと?
ここのフラットも遂にドラマのような展開が……!?」
ケイト:
「あら、イケメンならアーサーとジェイコブがいるじゃない」
アリシア:
「え~!もっと透明感のある人求む~~!」
ジェイコブ:
「……どうする?俺たち透明感足りねえってよ」
アーサー:
「増やす?」
ジェイコブ:
「ハハ、どうやって?」
アーサー:
「……バンドを組むとか」
ジェイコブ:
「!!
お前、やっとその気に?」
アーサー:
「検討中。
お前の仲間に会ってみるのも悪くないかなって思ってさ」
ジェイコブ:
「おお!お前が入ってくれたら言うことはねえ」
アーサー:
「まだ入るなんて言ってないぞ」
ジェイコブ:
「分かってるって!
しかし、まずは行動を起こすことが大事だからな。
お前、土日なら空いてるだろ?日が決まったら教えるわ」
アーサー:
「……」
ブリジット:
「アーサーは2年前――大学卒業を控えた頃だった――
ウィンデンバーグで開かれたドラッグパーティーに参加し、
オーバードーズになって倒れた」
「……3日間意識が戻らず、非常に危険な状態だったらしい」
「このことは大学卒業後、彼から電話で聞いた。
彼はそれ以上のことは教えてくれず、私も聞かなかった。
彼には何より治療の時間が必要だった。
私も卒業後すぐ警察学校に入り、2年間の合宿が始まった。
……会ってゆっくり話す時間などなかった」
「(彼のことだから、断り切れないで参加したのかな。
あの時もそう思った)」
「当時アーサーは私にこう言った。
『友人たちとふざけすぎてしまった』」
「(だけどあの彼の反応……。
本当に誰かに強要された?
一緒に行ったお友達に話を聞きたいところだけど、
誰だか分からないし、アーサーは教えてくれない。
ジェイコブやケイトなら何か知ってるかもしれないけど、
気軽に口にできる話題じゃないし……)」
「うーん……」
エリック:
「お悩みだな」
ブリジット:
「エリックさん。
悩んでるってほどじゃないんですが……」
「(……そうか!エリックさんなら)」
「エリックさん、この国のドラッグ事情についてどう思いますか?」
エリック:
「今、お前が担当してるのは薬物犯罪か?」
ブリジット:
「……いいえ!」
エリック:
「仕事してるのかあ?」
ブリジット:
「してます!
仕事してるからこそです。
もっと取り締まりを強化すべきなんじゃないでしょうか?
…………今や、貴族もドラッグに手を染める世の中に」
エリック:
「……」
ブリジット:
「……」
エリック:
「貴族どころか、王族さえ手をだした噂がある。
そのうち合法化するかもな」
ブリジット:
「公園に行けば10代の子たちが普通に吸ってますし、
サン・マイシューノ郊外周辺は特にひどいと聞きます。
そこら中ドラッグの臭いが漂ってるって。
密輸業者や売人だけじゃなく、本来ならあの子たちも……。
それに、ここ数年の治安悪化はドラッグのせいもあると思うんです」
エリック:
「そうだな……。で?」
ブリジット:
「……お仕事です」
エリック:
「その通り」
「ヘルナンデス巡査部長が待ってるぞ」
「……エヴァンス巡査、治安維持にはパトロールも必要よ?」
ブリジット:
「あっ!!すみません、すぐ行きます!」
エリック:
「(やれやれ……)」