#15 「悠久の愛」

アリシア:
「ね、ね、ブリジット。
アーサーのこと教えて」

ブリジット:
「アーサーのこと?」

アリシア:
「あ、あいつ自体にはぜ~んぜん興味ないんだけどね。
何て言うかなあ、2人のこと!
興味あるんだ」

サマンサ:
「うふふ……。
アリシアね、ブリジットたちの関係が気になるんだって」

ブリジット:
「そうなの?アーサーは大切なお友達だよ。
中学から高校までずっと文通してたしね」

アリシア:
「へえーっ、文通!!」

ブリジット:
「うん!私たちが13歳の時の話だけど……。
アーサーはアリッドリッジ校に行くことになったんだ。
でも、あそこは全寮制でしょ。
ほとんど会えなくなっちゃうから、手紙のやり取りをすることにしたの」

アリシア:
「てかさ、ちょっと待ってちょっと待って。
ひとつ良い?
ブリジットたちって何者?
あいつとどうやって知り合ったの?」

ブリジット:
「小学生の頃に遊びに行った公園でたまたま知り合ったの。
別に家同士で付き合いがあった、とかではないよ」

サマンサ:
「私たち、貴族じゃないもんね」

アリシア:
「(うおー、これが運命の出会いってやつかあ~っ!
すげーっ!)
ほう、公園で!
で、そんでっ!?」

ブリジット:
「それから仲良くなって、で、今に至る、って感じかな!」

サマンサ:
「その説明もすごいけど……」

ブリジット:
「話せば長いからね」

アリシア:
「で、で?何てやり取りしたの?
(ドキドキ……)」

ブリジット:
「うーん……。
取り留めのないことかなあ。
学校であった面白いこととか、早くホリデーにならないかなとか」

アリシア:
「……よく続いたね」

ブリジット:
「そうだね。お互い筆まめだったからかも。
でもね、手紙は面倒って思う人も多いかもしれないけど……。
受け取る人の気持ちを思って書けば、意外と書けちゃうよ」

アリシア:
「ははあ、なるほど……そういうことか」

ブリジット:
「何が?」

アリシア:
「ううん、こっちの話」

ブリジット:
「あ、そうだ。
今度、アーサーが送ってくれた写真見せてあげる。
アリッドリッジ校の頃のアーサーが見られるよ」

アリシア:
「うおー、見たい!
あそこの制服、燕尾服なんだよね」

サマンサ:
「アーサーは違うよね」

ブリジット:
「うん」

アリシア:
「ほう?」

ブリジット:
「アーサーは『竜の子』だったから」

アリシア:
「聞いたことある!
確か上位貴族の子しかなれないんだよね?」

ブリジット:
「うん。
普通は燕尾服なんだけど『竜の子』だと制服が違うみたい」

アリシア:
「『竜の子』か……。
そもそもアリッドリッジ校なんて、優秀で良いとこ出のお坊ちゃんしか行けないわけじゃん?
その中から選ばれたってわけでしょ……。
そんで、ウィンデンバーグ大学行って、卒業したらオーク・アルコーブ社に入社!
あいつどんだけエリート街道なわけ!?」

サマンサ:
「アーサーも大変だよね」

ブリジット:
「うん……。
きらびやかな世界は好きじゃないってよく言ってた」

アリシア:
「あー、だから話さないんだ」

ブリジット:
「?」

アリシア:
「あいつがベラミー家のお坊ちゃんってのは知ってるよ。
でも、どんな暮らししてたかとかその辺あんまり話題にしないからさ。
こっちは超興味あるのに!
貴族が嫌ならあたしが代わってやりたいよ」

ブリジット:
「ふふ。そしたら社交界に出なくちゃ」

アリシア:
「そうだね、綺麗なおべべ着て!」

ブリジット:
「おべべ?」

アーサー:
「はあ……」

「(最悪だ)」

「(見事にグダグダなプレゼンだった……。
自分でも言ってることが分からなくなった)」

「(クライアントは微笑んでくれたけど、ノーランドさんを怒らせてしまったし……)」

ノーランド:
今日のザマはなんだ!
貴様はもうスパにでも行って疲れを癒してこい!!
行かなきゃ出勤停止だ!

アーサー:
「(いくら寝不足だからって理由にならないな。反省)」

「あ、サマンサ。
ブリジットは?」

サマンサ:
「帰ったよ」

アーサー:
「まだ間に合うかな。用があって」

サマンサ:
「あ、本当?
今帰ったばかりだから追い付けると思うけど……」

アーサー:
「行ってくる」

サマンサ:
「(……本当に、何でこれで進展しないんだろう……)」

 

Leave a Reply